一つ、賭けをしようか

コルダ新刊発売日ですねー！
もう数日前から楽しみで楽しみで…！

あ、笑顔動画で２６話も見てきましたよ。（ＤＶＤ最終巻のみにあるアニメ）
やー凄いな、逆ハーですね！
やはり土日はいい、な！

そんなこんなで土日に萌えてるのでＳＳ投下…！
運命カップルですよ！互いに初恋だと思ってます。（小学生の時の出会い）

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「香穂！お前なぁ！」
「あはは、どうだった？」

音楽科棟の奥にある練習棟。
ここに来るまでに持っていた怒りという感情が、ケラケラと笑う香穂子を見て抜けていくのを感じた。

土浦は深く嘆息し、「で？」と眼で問う。

「何がしたかったんだ、お前は」
「んー？まぁちょっとね。っていうか結果はどうだった？」

結果、と言うのは五限目にあった古文の小テストの出来。
加えて、ただの小テストではなく抜き打ち、と言うもの。

「国語系苦手だって分かって言ってんだよな」
「いやいや、何だかんだ言って土浦さんは頭いいですからねー」
「…苦手だっつってんだろ。つーか周囲は知ってて俺だけ知らないってのは焦るだろ、普通」

抜き打ち、と言っても、一クラスがあれば残りのクラスも行われるのはどの教科も同じで。
抜き打ちテストに泣くのは最初に当たったクラスだけで後のクラスは全く同じ問題が出される為、楽な物だ。

例に漏れず今回の古文もそうだった。

昼休みに入るなり香穂子に教室から連れ出され、練習室を取ったからと言われれば、休み時間をギリギリまで練習室で過ごすのは毎回の事。
同じ敷地内にあるが離れている普通科の校舎へ戻るには時間を要するから予鈴までには部屋を出る。
そして、教室までの帰り道は他愛もない事や練習の出来を話し、香穂子のクラスの前で予鈴と同時に「また後で」と別れるのだが、今日は少し違って。

『ねぇ、勝負しない？』

唐突に話を持ち出すのはいつもの事だが、慣れる事もなく「はぁ？」といつものように返した土浦に、香穂子はにんまりと笑った。


『次の小テストの梁の点数と私の点数。勝ったらリクエスト聞いてね』


そしてその言葉に返事をする前に、香穂子と同じクラスの佐々木の所に居たのか土浦と同じクラスの実川が驚いたように声を上げた。


『土浦！お前何処行ってたんだよ！次古文小テストだってよ！』
『は？』
『佐々木、サンキュー！助かった恩に着る！』

そう言って本鈴の鳴り始めと共に実川が土浦に行くぞ、と呼びかけた。
次のテストの事を知っていて黙っていた事、それに対しての勝負の事に文句を言う前に教室に消えた香穂子に、覚えてろよ、と心中で呟いて、少しでも頭に叩き込もうと教室に戻った。


それが、今から三時間前の事。


「だってさ、私のトコが『当たり』だったんだよ、フェアにいこうよ、ね」

反省の色も見せずニッコリと笑う香穂子に、終わったものは仕方ないと、諦めて。
小テストの結果は互いに次の授業に返ってくる為、勝敗は分からないが手応えを聞いている限り香穂子の方が上のようだった。

「ったく。何が聴きたかったんだ？」
「え？」
「リクエスト、聞けって言っただろ、お前」

くしゃ、と香穂子の髪を乱し、ピアノへと向かう。
その姿に、リクエストを聞く、と言うのが伝わる。

「おぉ！潔いね、男だね！」
「弾くのやめるぞ」
「えーっとね、『愛のあいさつ』」
「……」
「と、『愛の夢』」
「香穂」
「で、『エリーゼのために』」
「お前な」

短い髪をぐしゃりとかき上げる。
俯いている為に表情は見えないが、短い為に見える耳は赤くなっていて。

「『自分の演奏で何を語るべきか、いかに語るべきか』だよね」
「…くそ、分かったよ。で？それで終わりか？」
「あ、ううん、もう一つ」


そういう香穂子に、指をならしながら顔を向ければ。


「帰り、正門出る前から手を繋いで帰りませんか？」


手を差し出して、頬を朱に染めて。


そんな香穂子に、時を奪われたように、瞬きすら忘れたように、土浦がじっと香穂子から視線を動かせずに居れば、「梁？」と名を呼ばれる。
その響きには「ダメなのか」と悲しみを持っていたように聞こえた。

ゆっくりと引いていく手を、慌てて捕まえて指を絡ませる。


「ほんっと、欲のない女」
「いい女でしょ」
「あぁ、そうだな」

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土浦が「香穂」と呼ぶのは公式ですが、香穂ちゃんが恋人設定の土浦をなんと呼ぶのかは不明なのですが（天羽ちゃんが聞いたけど答えなかった）、うちのは「梁」で。